民話の里の観音さま
8月が終わったと思ったら一気に寒くなってきました。
富士山が平年よりも21日も早い初冠雪を記録したようで、これから年末に向けて一気に駆け抜ける季節の歩みの早さを感じますね。
そんな中、岩手県遠野市に足を運びました。岩手県遠野地域は不思議な民話が残る地域。馬と少女の悲しい恋物語「オシラサマ」の伝承や一昨年遠野を訪ねたときは、きゅうりをエサに川で「カッパ釣り」をしました。
そんな遠野には遠野七観音として7体の観音様が伝わっています。
今回ご紹介するのは遠野七観音の1つ「鞍迫観音堂」の仏像。1659年の火災によって真っ黒焦げになり、出会った時は一瞬、ぎょっとする仏像ですが、元々は十一面観音という仏さま。
「鞍迫観音堂」の成り立ちは852年に慈覚大師円仁さんが鞍迫山福瀧寺を創建し、この十一面観音像を自ら桂の巨木に刻んで安置したと伝えられています。
最初のお堂は万治2年の火災で焼失し仏像が燃え盛る炎によって黒焦げとなりながらもその姿を残しました。腰から上しか残っていませんが、本来は3mを超える大きな仏像であったようです。
黒焦げになりながらも遠野を守る姿は、勇ましさを感じます。
観音像のまわりには素朴なちょっとユルい顔をした天部像や十一面観音像の姿もあって、あー地元の人々が愛してやまないお堂だったんだなぁと感じます。
そんな事を考えながらお堂の中でぼーっとしていると、人々の笑い声や観音像の息遣いを感じるような気がしました。