ブログ

ハマっ子だったら地産地消!?「横浜の仏像」を、味わう。

おお、2021年の2ヶ月目が終わろうとしている…!

まだ、お出かけには「自粛」の貼り紙を貼られているとはいえ、すこーしずつ、コロナな季節が明けるかもしれない「いつか」が近づいてきている、そんな気もうっすらしている今日この頃です。
コロナが明けたら、この世界はどんだけ享楽的な祝祭ムードに包まれるんだろうか…なんてことを考えながら、横浜に住む仏像好きの人間として、不要不急の案件と言わざるをえない、こちらの展示にいってまいりました。

はい、こちら!「特別展 横浜の仏像-しられざるみほとけたち」(横浜市歴史博物館)。
先に行った仏像部員から、よかったよ!という話は聞いていたのですが、まっこと良かった。

‖濱仏調査50年目のメモリアルイヤー

2021年は、横浜市域で仏像彫刻の調査が始まって50年目の節目の年(祝)だそうで、展示はこのエリアで見つかった(関わりのあった)仏像を時代ごとに分けた6部構成(飛鳥奈良/平安前期・中期・後期/鎌倉前期・中期・後期〜)になっています。
出品数は43、展示室も1室のこじんまりとした展示ではあるんですが、わたくし、静かな興奮に一人打ち震えておりました。奥さん、滋味深い仏像、揃ってましたよ…!

その中で、気になった仏像についての感想を、図録写真の引用&イラストを混じえながら、以下書き連ねたいと思います。
ちなみに、コラムや展示作品以外の市内文化財マップなどもどーんと掲載されている図録、めちゃくちゃおすすめです。
※番号は展示No.です。


( 3 )如来坐像(伝阿弥陀如来像)/鶴見区・松陰寺/飛鳥時代

しょっぱなから、心を掴まれました。この時代の小さめの金銅仏の愛らしさに弱いということもあります。中宮寺の菩薩さんや法隆寺の釈迦三尊でも見られる、この裳掛座に下がる衣のデフォルメ具合よ…!
デフォルメは、その対象の形を正確に捉えた上でしか表現しえないもの。鑑賞時、その抜き差し加減の妙味を作り手と共有するような、刹那にフェティシズムを分かち合うような、その感覚がたまらないのであります。
表情も古代のおおらかさにあふれていて癒される…。そして、この省略された螺髪…

ミラーボール以外の何ものでもないじゃないですか…!

もう、ミラーボール如来って呼んでいいですか…!?

‖素朴さといなたさと力強さと

( 6 )十一面観音菩薩立像/栄区・弘明寺/平安時代

仏が今にも出てきた!感を演出したり、彫る音で功徳を積めるという噂で持ちきりの、ノミ跡残る鉈彫り。

でた!押しも押されぬ、ハマ最古の寺・弘明寺のスター観音。こう、何体も仏像がいる中でお会いすると、お寺で会った時とは抱く印象も異なりますね。
土着的なほっこり仏像が他にも並んでいるので(バーンと見栄えのいい展示ポジションにいるんですが)仲間となじんで、リラックスしている感じ。しっかし、鉈彫り、かっこええのう。

( 8 )薬師如来立像/栄区・證菩提寺/平安時代

こうしてみると、「トリックorトリート!」って言いに来そうな童にも見える。

素朴といなたさの権化。(11)の薬師さんは、そこに少し神性をまぶした感じ。

「仏像の表現形式を十分に理解していないと思われる部分が多く、作者はこの地方在住の者で、専門的な仏師ではない可能性がある。」(図録『横浜の仏像-しられざるみほとけたち』137Pより引用)

…だが、それがいい!

(12)菩薩立像(伝千手観音菩薩像)/青葉区・真福寺/平安時代

展示群の中でも、ひときわ異彩を放っていたのがこちらの菩薩さん。スギの一木造りで十一面八臂。元々は一面六臂だったようで、図録の解説などを読んでも、表には出ていない脚のふくらはぎまで彫り出されていたり(!)と、諸々異形なようです。それとは別に、個人的に感じた異形ポイントは…

・へそが「Xbox」(昔の方のロゴ)のそれ

・上の手が「OMG!」に見えて、これが本当のお手上げ(!)

・水かき部分がチェック柄だと…!?

の3点です。なんぞこれ。

‖多角形宝冠っていいもんですね

(20)釈迦如来坐像/南区・寶林寺/平安時代

今回の展示の中で、いちばん上司にしたい仏像。判断、間違えなさそう。

(21)阿弥陀如来坐像(阿弥陀三尊像中尊)/栄区・證菩提寺/平安時代

やっぱり、いい…すごくいい。実はこの方とは、再会なんです。以前、仏像部内の別ユニット「横濱婦人会」でお寺の方に伺ったときのリポートを、手入れしていない過疎ブログから引きますね…この仏像、背中もいいんだぜ!

(28)阿弥陀如来および両脇侍立像/金沢区・龍華寺/鎌倉時代 
(29)観音菩薩立像/金沢区・薬王寺/鎌倉時代

THE 善光寺式阿弥陀三尊をお手本にした仏像なんですが…この右の脇侍である観音菩薩のフォルム、気持ちよくないですか?
上に向けて幅広の背の高い帽子から、スーッと目線を落としていくと、体全体がこう、腰のところで一旦くびれてまた下に向けて幅が広がっていく…鼓を縦に置いたようなバランスで立っている様が素敵です。
(29)も同じくして、善光寺阿弥陀の観音量産型モデルのようですが、(28)とは少し違って、腰にボリュームがある。ずんぐりしているというか。
なんでだろうと思ったら、上半身は銅造、下半身は木造なんですって!火事か何かで失われた下半身を、後から補ってこうなったとのこと。はああ、なる&ほどです。
にしても、この帽子いい形だな…多角形宝冠っていうんですね。いいなこれ。

(30)釈迦如来立像/青葉区・真福寺/鎌倉時代

画像引用:amazonより

ポスターにもお目見えしている清涼寺式釈迦如来の横浜ver.。かなり前に、一度京都の清涼寺で元ネタの御大を拝んだことがあるのですが、独特の異様さに気圧された記憶があります。
で、横浜型の方も、やっぱりなんともいえない空気を醸しておられました。だいぶ凝った作られ方をしているようで。この同心円状のぐるぐるを見ていると、伊藤潤二先生のうずまきを思い出してしまう…!それが言いたかった!
でも、ときに異様さ、怖さみたいなものも、信仰の対象である仏像には必要だったんだろうな。


ということで、以上、つらつらと誰かに言いたくて仕方なかったことを、まとめた拙いリポートでした。実に味わい深き、横浜の仏像哉。
展示は、3月21日(日)まで開催されているので、足を運べそうな方は、無理のない範囲でぜひ!
横浜に住んで5年目にして、初訪問だった横浜歴史博物館、はたらくスタッフの方々がとても丁寧な対応をしてくださって、気持ちよく鑑賞ができたことも、併せて記しておきます。今度は常設展も見に行こう。

好きな仏像が増えた。それが、また嬉しい。
最近、見れば見るほど、仏像の面白さがじわじわ広がっていくような気持ちになります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA